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インフルエンザワクチン:従来のワクチン(不活化)とフルミスト(点鼻、生ワクチン)の比較

本年から当院でも扱うフルミストについて触れます。

まず簡単に歴史について述べます。

初期(2003年〜2012年頃)

  • 小児に対して注射型の不活化ワクチンよりも高い有効性があるとされ、特に「子どもでは第一選択」とまで言われていました。

・問題が指摘された時期(2013〜2016シーズン)

  • 米国CDC/ACIPのデータで、フルミストの H1N1株に対する有効性が極端に低い ことが繰り返し報告されました。
  • そのため 2016/17シーズンから2シーズン連続でACIPは使用を推奨しない 方針をとりました。

・改良と再導入(2017〜2018以降)

  • 製造元(AstraZeneca社)は、問題のあった H1N1成分を改良した株に置き換えました。
  • その後の臨床データで ワクチンの効果が改善 したことが示され、2018/19シーズンから 米国ACIPで再び選択肢として推奨 されるようになりました。

AstraZeneca社がまとめたところでは、従来の不活化ワクチンとフルミストのワクチン効果に大きな差はありません。データは公的機関提供のデータですので、信頼度は高いと考えます。

https://www.flumisthcp.com/about-flumist/vaccine-effectiveness-and-efficacy

また、フルミストによる副反応としては「鼻閉・鼻漏」が59.2%で認められています。

以下、不活化ワクチンとフルミストの免疫応答・持続性比較等のまとめです。

項目従来の不活化ワクチンフルミスト(生ワクチン)
主免疫血中IgG粘膜IgA・T細胞
血中抗体強い弱〜中
粘膜IgAほぼなし明確に誘導
T細胞限定的強い
ピーク2–4週2–6週
血中持続6か月で低下もともと低め
粘膜持続なし3–6か月(最大12か月)
翌シーズン再接種必須同左
年齢差成人・高齢も可小児特に有効
臨床効果株一致でシーズン持続シーズン内有効、ばらつきあり

インフルエンザワクチンで発症を予防できる割合は、年度やA型・B型などの型にもよりますが、小児で概ね5割〜7割です。すなわち、せっかく接種しても予防できない場合はあります。ただ、外来でもよくお伝えしているのは、インフルエンザワクチンで最も重要なのは「脳炎・脳症」などの重症化を防ぐことです。

不活化ワクチンでは脳炎・脳症を防ぐことが示されてきました。総合的に考えると、フルミストも効果があるはずです。なぜなら、主に遺伝的な理由と推察されますが、アジアと比較して欧米では脳炎・脳症の報告が少なく比較困難ではあるものの、フルミスト接種で”入院率”を下げることが示されているためです。比較的最近導入された日本発のデータも今後徐々に出てくると思われます。

ロタリックス・ロタテックでもそうなのですが、効果がほぼ同じワクチンは、どちらを選ばれても問題ないと考えています。今回のインフルエンザワクチンについては投与方法が異なるので、そこが選ぶポイントになるかもしれません。